がん保険に加入する前に解決しておきたい疑問点5選

がん保険は万が一の時にとても役に立ってくれる保険ではありますが、加入する前に知っておいて欲しい注意点・疑問点がいくつかあります。

これからがん保険への加入を考えている方は、是非ともこれらのポイントを知ったうえで加入を検討していただきたいと思っています。

それでは、いきます。

がん保険は本当に必要性が高いのか?


がんの保障にのみ特化しているがん保険ですが、「がんだけが対象の保険って本当に必要なの?医療保険で良いんじゃないの?」と思う方も多いのではないかと思います。

確かに、「医療保険+公的な健康保険」だけでも多くの事態に備えることができるはずです。

それは間違いありません。

ただし、がんの治療は長引く場合があり、万が一に備えた方が良いのも事実です。

ということで、がん保険は必要なのか、それとも不要なのかを考察していきたいと思います。

がんになる確率は老後になるほど高くなる

まず、がんになる確率について。

これについて、確かに若い内のがん罹患率はとても低いです。

下の表は年齢階級別罹患リスク(2017年データ)になります。

※横にスクロール出来ます。
~39歳 ~49歳 ~59歳 ~69歳 ~79歳 生涯
男性 1.2% 2.7% 7.8% 21.9% 43.6% 65.5%
女性 2.3% 6.3% 12.4% 21.2% 32.8% 50.2%

※出典:国立研究開発法人国立がん研究センター「がんの統計2021」

これによると、39歳までであれば男性はわずか1.2%、女性は2.3%しかがんに罹っていないことになります。

人生の半分近くまで生きてきながらこれほどがんにかかる確率が低いなら、「よほど運が悪くない限り、自分にとって関係のない病気」と思えてしまうのは自然なことです。

豆知識
女性は若い内のがん罹患率は男性よりも高いですが、これは女性特有の「乳がん・子宮頸がん」などが20代という若い世代から発症するケースがあるためです。


ただし、表を見ても分かる通り、がんは年代が上がるにつれて加速度的に罹患率が高くなっていきます

仕事を引退して老後を楽しんでいる69歳の時点では4~5人に1人という確率になるので、この時点で全く他人ごとではなくなります。

そして79歳になるころには男性が43.6%、女性で32.8%にまで一気に跳ね上がってしまいます。

さらに、日本人が一生のうちにがんと診断される確率を見てみると

男性:65.5%
女性:50.2%

男性の方が確率が高いですが、生涯のうちに2人に1人強はがんになっていることが分かります。

本格的にがん罹患率が高くなるのは老後ということになりますね。

ということで、若い内はがんになる確率は低いのでがん保険の必要性は低いですが、最終的には2人に1人がかかるくらい罹患率が高くなるのも事実なので、老後におけるがん保険の必要性はかなり高くなると言えます。

医療保険+健康保険だけでがんに対応できるのか

「医療保険+健康保険(公的医療保険)」で十分足りるのではないか?という意見もありますが、確かに医療保険に入っていれば入院への保障は確保されます。

そして健康保険には医療費が3割負担になる上、高額療養費制度という非常に役立つ制度も用意されており、一般的な収入の方であれば治療費が100万円かかったと場合でも、1ヶ月の自己負担額は8万7,430円で済むようになっているのです(4回目以降は多数該当となり、44,400円が上限)。

ただ、確かにこれなら1ヶ月~2ヶ月程度の治療期間であれば、いくら治療費がかかろうが「医療保険+公的医療保険」のおかげで大きな問題なく対応できるだろうと思います。

それは間違いないでしょう。

ただし、がんの治療期間はその深刻度によって異なります。

進行が進んだがんの場合、年単位での長期の治療を受けることもあり、その場合はいくら高額療養費制度があるとはいえ、年間で数十万円の費用が掛かります

また、がんの治療費の他にも「入院・通院・またはお見舞いの交通費」「入院中の食事代」「差額ベッド代」などの支出もあります。

さらに最近のがん治療は入院の比率が減り、通院比率が増えているので、医療保険では足りないという状況になりかねません。

そのため、がん保険のように「がんと診断されたら50万円~100万円」という保障があれば様々な出費に幅広く対応できますし、全額自己負担となる自由診療を利用するかどうかも選択肢に入れることが容易になってきます。

生活費の足しにも出来るため、仕事を休んだ場合の安心感も高いです。

医療保険ではこうはいかないので、万が一の深刻ながんを想定するなら、がん保険に入って備えておくという選択を取るのも十分アリなのではないかと思います。

注意点
ちなみに、がん治療には先進医療という健康保険が適用外のものもあり、治療費が全額自己負担になります。
特にがんの先進医療の中には200万円~300万円の費用が掛かる「陽子線治療」や「重粒子線治療」もあり、一般家庭の場合は家計を破綻しかねないほどの出費となってしまいます。
そのため、医療保険に入るにしろ、がん保険に入るにしろ、先進医療特約については前向きに付加するかどうかを検討して欲しいと思っています。


自営業の方はがん保険の必要性がかなり高くなる?

最近はITの大幅な進歩によって仕事の在り方がこれまでと大きく変わり、会社に頼らずに自宅でも仕事ができるような環境が整いつつある影響で、自営業(フリーランス)として個人で仕事をするという選択を取る方が増えています。

その一方、自営業の方は会社員と比べて社会保障が弱いため、民間の保険などで保障を手厚くしておく必要性が出てきます。

例えば会社員の方は傷病手当金がありますが、自営業の方はありません

傷病手当金とは?
病気やケガで会社を休んだ時に支給される手当金のことです。
給料の2/3にあたる傷病手当金を最長1年6ヶ月にわたり、受け取ることが出来ます。


この制度のおかげで、会社員であればがんになって長期間会社を休んだ場合でも、給料の2/3の手当金を受け取ることが出来るため、がん保険に入っていなくても生活費については心配する必要がなくなります。

ですが、自営業の方には傷病手当金がないため、がんで仕事を休んだ場合は治療費だけでなく、生活費も自分の貯蓄から捻出するしかありません。

そのため、自営業の方はがん保険の必要性はより高いと言えます。

がん保険の必要性について解説してきましたが、まとめると

一般家庭の場合で、深刻ながん治療の保障も考えるなら、がん保険の必要性はかなり高い

ということが言えるかと思います。

ただし、高額な先進医療や自由診療を受けても問題ないくらいの貯蓄があるなら、がん保険に加入する必要性は低いでしょう。

加入するタイミングはいつが良いのか


がん保険への加入を考えている人の中には、今すぐに加入すべきか迷っている方も多くいるかと思います。

これについては、まだ加入するかしないか分からないくらいの段階であれば、前向きな気持ちになるまで色々と調べたり、人から意見を聞いたりして情報が整理されるまで加入するのを待った方が良いでしょう。

焦って加入しても後悔するかも知れませんので、調べて自分なりに納得がいってから加入を検討することをお勧めします。

そうではなく、加入することは決めたけど、今すぐに入っても保険料が無駄になりそうだから、後から入った方がお得なんじゃないか・・?と考えているのであれば、その考えは逆に損になる可能性が高くなってしまうので、今すぐに加入することをお勧めします。

理由は、がん保険は加入が遅くなればなるほど保険料は高くなるからです。

これは月々に払う保険料が高くなるだけでなく、意外かもしれませんがトータルで支払う保険料の総額も高くなってしまうのです。

下の表は一般的ながん保険に終身払で加入した場合の、保険料支払総額の例になります。

実際に販売されているがん保険の保険料にかなり近い数字を使って計算しています。

※横にスクロール出来ます。
加入時の年齢 月払保険料 70歳時点での
支払総額
70歳時点での
支払総額
80歳時点での
支払総額
30歳 1,720円 619,200円 825,600円 1,032,000円
40歳 2,470円 592,800円 889,200円 1,185,600円
50歳 3,810円 457,200円 914,400円 1,371,600円


30歳で加入した人の場合、確かに60歳時点では40歳加入・50歳加入の人より保険料の支払総額は高いですが、もう少し時間が経って70歳時点になると30歳で加入した人の方が支払った保険料は安くなっています。

以降はその差はどんどんと広がっていきます。

どの程度長生きするかによりますが、日本人の平均寿命は男性が約81歳、女性が約87歳というデータがありますので、早めに加入した方が高い確率で金銭的にお得になるということが分かります。

また、がん保険への加入を先延ばしした結果、加入する前にがんになってしまった場合、通常のがん保険に加入するのがとても難しくなってしまいます

次の章で詳しく解説しますが、がん経験者の方は保険料が高めのがん保険にしか入れなくなる可能性が高くなるのです。

そのため、基本的にがん保険に加入する気があり、その時期に迷っているのであれば、今この時に加入するのが一番良い結果を運んでくれる可能性が高いです。

早めの行動が吉になるのががん保険なのです。

女性の方へ
女性は20代・30代でも女性特有のがんのリスクがあり、若い内は男性よりもがんの罹患率が高いのが現状です。
なので、若い内からでもがん保険は真剣に検討しておくのが良いかと思います。


がん経験者は普通のがん保険には加入できない!?


これまでにがんに罹ったことがある方は、残念ながら一般的ながん保険に加入することは難しくなっています

これはがん保険に加入する際に健康状態などの告知をする必要があるのですが、過去に一度でもがんに罹患している人は基本的に加入できないと決められていることが多いからです。

では、がん経験者はがん保険には加入できないのかというと、そんなことはありません

審査基準が緩和された「引受基準緩和型」のがん保険も数が少ないながらも用意されており、条件を満たすことで加入することができるのです。

一度がんに罹った方はやはり再発や転移の心配があり、出来れば保険には入っておきたいという希望を持つ方も少なくないかと思います。

一般的ながん保険と比べると保険料が割高になっているというデメリットがありますが、それを受け入れた上でなお「やっぱり入っておきたい!」というのであれば、是非とも引受基準緩和型のがん保険も検討してみてはどうかと思います。

また、引受基準緩和型には医療保険もありますので、幅広く探したいという方はがん保険だけでなく医療保険の方も探してみてはどうでしょうか。

がんと診断されても給付金が支払われないことも?


がん保険に加入したとはいえ、どんな状況でも必ず給付金が支払われる訳ではありません

実は支払いの対象外になってしまうケースもあるのです。

以下、がん保険によくありがちな「給付金が支払われないケース」をまとめましたので、がんになった時に「話が違う!」ということにならないよう、加入する前に必ずチェックするようにしましょう。

加入して90日以内にがんになった場合は支払われない

基本的にがん保険には90日間の免責期間が存在します。

これはどういうものなのかというと、がん保険に加入したとしても、90日(または3ヶ月)の間にがんと診断されたり治療を受けても保障の対象外となっているのです。

なぜ免責期間が設けられているの?
がんに罹っている疑いがあったにも関わらず、そのことを保険会社に申告せずに加入し、意図的に給付金を受け取ろうとするケースを防ぐためと言われています。
これにより、契約者間の公平性を保っているという訳です。


つまり、がん保険に加入してから90日(または3ヶ月間)の間にがんになったとしても給付金が支払われることはありませんので、これは忘れないようにしておいてください。

上皮内新生物が保障の対象外になっている

「がん」と聞くと体や内臓の深くに出来ているものというイメージがある方も多いと思います。

このような深くまで浸透しているがんは「悪性新生物(悪性腫瘍)」と呼ばれており、他の臓器に転移するリスクがあります。

どのがん保険でも基本的に悪性新生物については保障されるようになっています。

ですが、がんにはもう一つ種類があります。

それが「上皮内新生物」です。

悪性新生物まで進行していないがんのことで、まだ表面の上皮細胞でとどまっているものをそう呼びます。

この上皮内新生物は手術をすることで完治が見込め、再発リスクも低いと言われているため、治療費はそれほど多くはかかりません。

ただ、がんの症状としては大したことがなのは良いのですが、がん保険によってはこの上皮内新生物については保障の対象外になっているものもあるのです。

上皮内新生物が対象外のがん保険に入っている場合、上皮内新生物の治療を受けたとしても当然給付金は支払われませんので、加入予定のがん保険がどのような保障範囲なのか、前もって確認しておくことをお勧めします。

ポイント
検討中のがん保険が上皮内新生物が保障の対象外だったとしても、がん保険の本領はあくまでも悪性新生物に対してどのような保障になっているかにかかっているので、がん保険選びにおいて上皮内新生物についてはそこまで重要視する必要はないと思います。

がん診断給付金の2回目の条件に当てはまっていない

がん保険の保障の中でも特に重要な位置付けにいるのが「がん診断給付金」です。

がんと診断されただけで、50万円~100万円といった大きな一時金を受け取れるというのが特徴です。

この保障のどこに問題があるのかというと、初回のがんは診断されただけで給付されるケースが多いのですが、2回目以降の給付条件が商品ごとに異なり、初回よりも厳しい条件に設定されていることにあります。

条件 結果
がん保険A そもそも1回のみの支払い 2回目以降のがんは対象外
がん保険B 2回目以降は入院が条件 通院だけだと対象外
がん保険C 2年に1回が限度 1年後の再発だと対象外


このように、2回目以降の給付金が支払われるかどうかはそのがん保険の給付条件によって異なるのです。

そのため、がん保険に加入する前にがん診断給付金の2回目の条件は必ずチェックしておくことをお勧めします。

そもそも保障の対象外の治療を受けていた

がん保険は商品ごとに保障内容が異なりますので、治療内容によっては保障の対象外になることもあります。

例えば入院保障を主契約とするがん保険に加入したけど、通院については保障に加えていなかった場合、がんになって通院治療を受けたとしてもそれは保障の対象外となり、給付金は支払われません。

また、がん治療の中には自由診療や先進医療もありますが、これらの保障を主契約の中に含んでいるがん保険はそれほど多くありません。

もしそれらの保障が主契約に含まれておらず、さらに特約としてその保障を付けていなかった場合、自由診療や先進医療を受けても保障の対象外になってしまいます。

がんの先進医療の中には200万円~300万円の費用が掛かるものもあり、健康保険も効かないため、がん保険への加入の前にそれらの保障が主契約に含まれているか、含まれていないなら特約で付けておくべきか、しっかりと検討したうえで加入する必要があります。

介護医療保険料控除の対象にはなるのか?


がん保険の保険料は所得控除の対象となります

正式には「介護医療保険料控除」となり、支払った保険料の額に応じて一定額が所得から控除されるため、節税になるのです。

具体的にいくら控除されるの?
例えば年収400万円の会社員ががん保険に入り、年間保険料8万円を払った場合は所得税で4万円住民税で2.8万円が控除されます。
結果として、所得税と住民税合わせて約6,800円ほど節税できることになります。


保険料が高いほど節税効果も高くなります

意外とバカにできない金額がお得になるので、がん保険に加入している方は必ず利用するようにしましょう。

ちなみに、医療保険も介護医療保険料控除の対象となっているため、医療保険とがん保険の両方に加入している場合は二つ合わせて年間保険料8万円が上限となりますので、その点はご注意ください。

まとめ

今回はがん保険に加入する前に解決しておきたい疑問点として、5つ厳選して紹介してきました。

がん保険はがんの保障に限定されているものの、万が一の時に大きな給付金を受け取れるとして、私たちに大きな安心感を与えてくれます。

保険としても無駄が少なく、理にかなっています。

ですが、今回解説してきたようにその力を発揮できない状況がありますし、逆に知っておくことで金銭的にお得な状況に持っていけるのも事実です。

加入の際はよくそのことを理解しておき、いざという時に困ることのないようにしておきましょう。